flotte’s diary

書き留める、日々の徒然。

土木の日、湊川隧道を突き抜ける

11月10日。

年に一度しか開催されないイベント、「土木の日」新湊川ウォーク 湊川隧道通り抜けに行って来ました。

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前置きが長いので、イベントレポートをご覧になる際は『湊川隧道通り抜けに行ってきた!』以降をどうぞ! 

目次

湊川隧道(みなとがわずいどう)とは 

湊川とは

  • 正式名称 湊川
  • 六甲山系再度山ふたたびさん山麓から流れる天王川が神戸市兵庫区で石井川と合流した地点からスタートし、会下山えげやまの下をトンネルで抜け、長田区にある長田神社方面から流れて来る苅藻川かるもがわと合流し、大阪湾に流れ込む。
  • 1901(明治34)年、神戸における明治期の大土木工事『湊川の付け替え』が完了し、現在の形となった。
  • 治水工事が行われるまでは、以下のような問題を抱えていた。

    • 流路が定まらなかった。
    • 大雨が降ると、六甲山から土砂が流れ出すと共に氾濫が起きた。
    • 当時の湊川は高さ8mの堤防を持つ天井川(流れてきた土砂が堤防内に溜まることで、川底の高さが周辺の土地よりも高くなった川)で洪水の危険性が非常に高く、この堤防によって川沿いの東西の町が分断され、交通に支障が出ていた。
    • 流出した土砂が神戸港に流れ込み、港としての機能が低下した。
  • 明治の初め頃から『湊川の付け替え』工事をしようという議論が行われていたが、あまりにも大規模な土木工事となる為容易に実行できず、話し合い止まりとなっていた。
  • 1896(明治29)年8月、台風による猛烈な雨に襲われて湊川の堤防が100mにわたって決壊し、死傷者系95名、周辺の家屋が多数流失・浸水するなどして甚大な被害をもたらした。これをきっかけに話し合いが進み、付け替え工事が具体的に。

 

湊川隧道とは

  • 1901(明治34)年、日本で初めて建設された河川トンネル全長600m、幅7.3m、高さは7.6m
  • 「会下山隧道」「会下山トンネル」とも呼ばれるが、阪神淡路大震災後の復旧工事の際に「湊川隧道」と記された銘板が見つかったことから、それ以降湊川隧道と呼ばれる。「隧道」はトンネルを意味し、現在ではあまり使われていないのか聞き慣れない言葉だが、今でもトンネルの正式名称として用いられることがある。
  • 断面形状は馬蹄形で、側壁と天井のアーチはレンガ造り底部分は流水や土砂が川底を削るのを防ぐ為に、3,4段に積まれたレンガの上に花崗岩を素材とした石材が並べられ、河川トンネルとしての機能が損なわれないよう、様々な工夫が構造・材料に施され、効果的な洗堀摩耗対策が行われている。
  • 坑口(隧道の出入り口)は、呑口(上流側)が古典様式、吐口(上流側)がゴシック様式となっている。阪神淡路大震災後の復旧工事により、呑口は昭和初期の増築時を、吐口は明治期完成当時をそれぞれイメージしてデザインされた
  • 坑口の上部には、トンネル建設の記念碑とも言われる扁額(長方形の額)が設置されている。呑口・吐口共に、当時の陸軍大将・小松宮彰仁親王の揮毫で、呑口は『湊川』、吐口は『天長地久』(中国古典『老子』より、天地が永久に変わらず物事が永遠に続くことを表す)を掲げている。

 

湊川隧道の歴史

  • 1897(明治30)年5月、藤田伝三郎小曽根喜一郎大倉喜八郎などの豪商や実業家らが発起人となって湊川改修株式会社が設立され、湊川付け替え事業が始まる。大倉土木組が請け負い、1901(明治34)年、施行期間3年9か月を経て完成。2000(平成12)年12月に役目を終えるまでの以降100年間、湊川の水を流し続けた。
  • 1995(平成5)年1月17日、阪神淡路大震災により大きな被害を受ける。復旧の際には、被災前の元の姿に戻すだけではなく、河道断面積の拡大や安全・快適な水辺空間の整備を併せて行う「河川災害復旧助成事業」による改良復旧工事が行われた。
  • 河川トンネルとしての役目を終えた2000(平成12)年、系譜的・技術的・意匠的価値が高く評価され、史跡として保存活用する為の整備が行われた。湊川隧道の機能は、新湊川トンネルへと引き継がれている。

 

土木の日」新湊川ウォーク 湊川隧道通り抜けに行ってきた!

このイベントを知ったきっかけ

先日のことですが、ネット徘徊中に見つけた神戸ジャーナルさんの記事にて、湊川隧道という史跡があることを初めて知りました。

記事を表示すると飛び込んでくる、金と黒に染まったこのトンネルの画像に惹かれてしまいました。

小さく表示されている画像だけでも魅力的ですよね!

あと、通り抜けのチラシに書かれた「記念品」という文字にも惹かれて……。

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「土木の日」新湊川ウォーク 湊川隧道通り抜けチラシより

※インバートとは、隧道の底部分のことです。

 こういったイベント事で配布される「記念品」には弱い私です。

 

最寄り駅から湊川隧道へ

最寄りの駅から湊川隧道への道は、単純でわかりやすいものでした。

地下にある神戸電鉄 湊川から地上に出ると、目の前に誘導案内を持った方が立たれていたので、どの方面(神戸市兵庫区役所方面)に行けば良いかすぐわかりました。

湊川隧道周辺に近づくと、新湊川に架かる夢野橋にも案内の方がいらっしゃったので、スムーズに辿り着くことが出来ました。

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湊川隧道入口には、たくさんの方がいらっしゃいました。

年齢層は高めでしたが、小さなお子さん連れの方や若いカップルも見え、私のように一人で参加した方は少なく思いました。

 

到着した時刻は12時25分。

湊川隧道について書かれたパンフレットは既に尽きて配布終了となっており、これは記念品も尽きてしまったか……とちょっぴりがっかりしてしまいました。

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さあ、湊川隧道探検の旅へ 出発です。

 

湊川隧道は資料展示から始まる

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 入口に踏み込んですぐの所は資料展示となっており、明るい空間となっていました。

しかし、この資料展示部分、非常に傾斜がきつい!

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展示を見ていると自分の体も斜めになっていくので、何だか不思議な気分になりました。

ここの天井は特に変わったことなく、普通のものです。

 

湊川隧道、暗闇の先には

快適に歩ける前半

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 先ほどの展示スペース(と同時に傾斜のきつい坂)が終わり、暗い空間との境目に着きました。

もうこの時点で、非日常な雰囲気が奥から漂ってきてドキドキしました。

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因みに、この地点での気温は約16℃、湿度は約65%でした。

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先ほどまでの足元・天井は悪く言えば味のないものでしたが、ここから隧道本体となり、様子が一変しました。

足元は木製の足場が置かれ、快適に歩くことが出来ました。

天井はアーチ状になっており、圧倒されます。

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ずっと奥まで続いており、本当に終わりがあるのかもわかりません。

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足元は暗く、掘り下げられている通路の脇には今も水が流れていました。

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壁面は、水の流れに長年侵されて変質していました。

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側壁下部から底にかけて、花崗岩の切り石に覆われています。

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 灯りがある部分は良く見えますが、灯りと灯りの間となると、暗くて見えません。

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天井からの雫

ある程度進むと、雨漏りのように天井から雫が落ちて来るようになり、服が少し濡れてしまいました。

例えるなら、雨上がりの直後に電線の下を歩いていたら、ぽったりと一滴だけ降ってくる……そんな感じです。

小雨のような可愛いものではなく、一滴一滴しっかり濡れてしまうような粒の大きさなので、おしゃれな服を着て行くには不向きです。

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進むごとに表情が変わっていく壁面

レンガとレンガの隙間を埋めていたであろうもの、レンガを覆っていたであろうものが剥がれ、造られてから長い年月が経ったんだということが伝わってきました。

そっと触らないと、ぼろぼろと崩れてしまいそうにも思えました。

 

一歩一歩が慎重になっていく後半

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ここからは木製の足場がなくなり、直に湊川隧道を歩いて行くこととなります。

画像でご覧の通り、水が溜まっていて滑りやすく大変危険な為、「土木の日」新湊川ウォーク 湊川隧道通り抜けのチラシに記載があった通り、車椅子の方やベビーカーを利用されてる方などはこの先に進むことができません。

杖などをついていて足元が覚束ない方も、ここで引き返した方が良いでしょう。

たくさんの方が連なって進む為、前の人のペースに合わせないと!と焦りそうになりますが、本当に滑りやすく、足元もごつごつとした凹凸があり歩きにくいので、落ち着いて一歩一歩踏み出すと安心です。

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 中央部分には、小川のような細い筋を作って、今でも水が流れていました。

この水筋の左側部分、濡れている所を歩いて来ました。

湊川隧道の底は湾曲していて、中央に水が集まって流れやすくなっています。

その為、ここを歩いて下さいねと指定された部分も斜めになっている上に滑りやすくなっているので、非常に歩きづらいものでした。

何回滑りそうになってひやひやしたことか。

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壁面の一部は蛇腹のように

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壁の一部には大きな窪み

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ずいずいずいと一歩ずつ進み、遂に湊川隧道の終点へと辿り着きました!

終点では撮影用のスペースが用意されていて、上の写真もそこから撮影したものです。

入口がはっきりわかるほど明るいので思っていたよりも短く感じますが、後半部分の足元が不安定な所を歩いていると時間がとても長く感じられました。

向こう一直線、気持ちの良いほど一直線です。

今でも残っている水の流れが、現役当時の湊川隧道の様子を僅かに感じられました。

 

湊川隧道はここまで。

ここから先は、資料展示部分のような整備された通路を歩き、現在使われている新湊川トンネルと合流します。

 

湊川隧道を経て、新湊川トンネルへ

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湊川トンネルへ辿り着きました!

湊川隧道に替わり、現在使われている新湊川トンネル

もう使われていない湊川隧道とは比較にもなりませんが、この時の水量は、トンネル内の汚れ具合的には少なめなんでしょうか。

湊川隧道を通り抜けた後は、この新湊川トンネルの出口から出て、新湊川に沿って歩いて行きました。

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湊川トンネルの吐口(下流側)を出て来ました。

小松宮彰仁親王がお書きになった、中国古典『老子』出典の「天地が永久に変わらず物事が永遠に続くこと」を表す『天地地久』という扁額が掲げられています。

 

イベントはもう少し続きます、川に沿ってもう少し。

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川沿いの道は途中、飛び石になっていました。

湊川は透き通っていて、とてもきれいでした。

小さな魚も泳いでいたりして、ゴミも少なく、変な臭いもせず、快適に歩くことができました。

 

ゴール、そして記念品は……

土木の日」新湊川ウォーク 湊川隧道通り抜けのゴールは、長田橋でした。

アンケートに回答したら、記念品を頂きました!残ってた、やったー!

参加者がたくさんいらっしゃったので記念品は諦めていましたが、これは嬉しい。

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恐らくですが、亀井堂総本店の瓦せんべい……!

オリジナル焼き印が入ったものを初めて手にしました、倍嬉しい!

味は普通の瓦せんべいと同じです、でも美味しいから良いの。

 

感想

資料展示の明るい場所から、隧道本体の暗い場所へ踏み込んだ瞬間、目が慣れた直後の息を飲むような思いは、言葉には表しにくいものでした。

暗く、閉鎖的な空間で怖くも思いましたが、想像していたよりも湿り気が無く快適でした。

バイオハザードSIRENといった、ホラーゲームに出て来そうな雰囲気がぷんぷんでわくわくもしました。実際プレイするとなると嫌ですが……。

非日常な空間に入り込むイベント、非常に楽しかったです!

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今回の行程はこういった感じです。

会下山公園付近は私の想像で線を引いたので、実際とは異なります。

 

参加する際の注意点

      •  湊川隧道を通り抜けることができるのは、年に一度、11月だけ!木製の足場が敷かれている前半部分までは、毎月第3土曜日に開催されているイベントで見学することができるようです。
      • 天井から水滴が降ってくる・足元が濡れていて汚れやすいので、滑りにくく汚れても良い服装・足元で行く!カメラなどで濡れたら困るものも、防水対策必須だと思います。靴は本当に滑りにくいものを!

 

参照したもの・併せて読むと良いもの

この記事を書くのに参照したもの、併せてご覧頂くともっと良いものを紹介します。

なお、本文中で既にリンク付けしたものは省略します。